吉村家　魂注ぎ込む　統将

ある日突然に店は現れた。横浜市中央卸売市場南部市場近くの、JR新杉田駅　近くの幹線道路沿い。1974年9月オープン。

吉村家？　赤字に白で書かれた文字。　初日のオープンは朝の5時。　約3時間後、一人目のお客様が来られた。

作業着姿の男性客は、当時1杯250円のラーメンを5分で完食した。何も言わず無言で帰ったが、ぶっきらぼうに1000円を置いていった。初日の売上は300杯。その後40年以上も続く、家系の歴史が始まる。

今では全国とアジアを中心に1000店舗以上あると言われる家系ラーメン店。吉村実さんはその元祖・吉村家の統将と言われている。

白のTシャツにズボン姿。トレードマークのねじりはちまきを締め、毎朝4時から仕込みに入る。お客様は我が味の師なり。　全力で魂を注ぎ込んできた。

吉村さんは山形県で生まれ、5歳頃に横浜に移り住んだ。学校を卒業後すぐに働き始め、様々な職を転々とし、長距離トラックの運転手に落ち着いた。

トラックで全国を回りながらラーメンを食べるうち、一つの思いが浮かんだ。九州の豚骨と東京の醤油を混ぜたらもっとうまくなるのではないのか。

思いつくとすぐに、仕事の合間に、平和島のトラックターミナルにあったラーメン店で手伝いを始めた。半年でラーメンのノウハウを覚え、自宅で創り上げたのが、最初の家系ラーメンの豚骨醤油である。

その後、噂が広まり、ラーメン1品のみの小さな店の前には、毎日大行列ができた。何度か増築を行い、現在の横浜駅西口に移転する。赤い看板に白文字で書かれた吉村家の横には、家系総本山の文字が堂々と書かれている。

多い日で約1800杯を売り上げるのが吉村家。人気店となった今でも、お客様にラーメンを出すときは緊張するとの事。

おいしいと言ってくださるお客様のためなら、どんな苦労も耐えられる。生涯現役でいる。

吉村家　吉村さん